日本臨床コーチング研究会メール通

日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年4月23日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 
今回は、社会医療法人財団 白十字会 佐世保中央病院 糖尿病センター長 松本
一成 先生の記事を配信させて頂きます。
 
 外国籍の看護師が日本の看護師国家試験に合格することはかなり難しく、合格率も低いそうです。日本語はやっぱり難しいのだろうと思います。
 
ある病院にコーチングの講演で招待されまして、病院の幹部(理事長、院長、事務長)の皆様に懇親会を開いてもらいました。そのときに、外国籍の看護師の国家試験合格祝いも兼ねて行うということでした。
 
合格した看護師はきっと優秀な人材なのだろうと思いましたが、私が興味を持ったのはその指導係の日本人看護師です。私は、「外国人に日本の看護を教えるのは大変だったでしょう?どんな工夫をされたのですか?」と質問しました。すると、その人は「そんなに大変では無かったですよ。彼女は何でもできる看護師でしたから、教えることなんてありませんでした。」と答えました。しかし、その発言に続いて、「ただ、勉強時間を確保できるように支援をしました。試験は看護が本当にできるかどうかを問いません。日本語の設問を読んで、何を聞かれているかを理解し、正しい答えを出すというルールを憶えることが大事です。」と言われました。これは凄いことです。外国籍の看護師と共に過ごして、その能力を承認し、国家試験の合格のために何が必要なのかを熟慮されています。彼女はとても素敵なコーチだと思いました。労働力不足が問題になっている昨今、外国人の働き手が日本に入ってくる機会が増えることでしょう。そのとき、外国人の能力を引き出せる人材こそが重宝な存在になることでしょう。コーチングを指導にいったのですが、むしろ私の方がよい勉強をした気分になりました。
 
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発行 日本臨床コーチング研究会
住所 857-1195 長崎県佐世保市大和町15番地 佐世保中央病院内
Mail rinsho-coach@hakujyujikai.or.jp
発行人 松本一成
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このページの更新日:2019/04/22

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年4月9日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

今回は、名城大学 薬学部 准教授 半谷 眞七子 先生の記事を配信させて頂きます。
 今回は、医師ががんの患者さんなどに悪いニュースを伝えるコミュニケーションを紹介します。医師が患者さんに悪い知らせを伝えた後に、悲しみや不安を抱えた状態の患者さんに対して、薬剤師などの他の医療者が患者にかかわることになりますますので、是非医師以外の他の医療者のかたも参考にしていただけたらと思います。

(SPIKESの手順を応用した薬剤師を対象とした映像は下記からみることが可能です。
パスワードは「cancer」です。 https://yyipe.meijo-u.ac.jp/cancer/)
 患者さん個人の未来像に有害で、かつ重大な影響をもたらす情報を「悪いニュース、バッドニュース」といいます。バッドニュースとは、病名の告知、再発・転移の告知、治療が十分に効かないことの説明、非可逆的・重篤な副作用の発現の説明、終末期医療への移行の説明などがあります。病名の告知、再発・転移の告知などのバッドニュースを患者さんに伝える場合には、医療者側も患者に配慮したコミュニケーションが必要になります。
 医師が悪い情報を扱うコミュニケーションの有名なモデルとして「SPIKESのモデル」があります。SPIKESは、アメリカM.Dアンダーソンがんセンター Baile先生方が開発されたコミュニケーションモデルです。6段階、すなわち
Setting 面談の設定、
Perception 患者の認識の評価、
Invitation 患者の求めの確認、
Knowledge 知識と情報の提供、
Empathy 感情への共感的対応、
Summary 今後の方針とまとめの頭文字をとってSPIKESと呼んでいます。
S:面談の設定
 最初に患者さんとお話をするために物理的環境、心理学的環境を整える必要があります。患者さんが話しやすく、患者さんのペースで話していただくためには、個人情報が漏れない、落ち着いた場所を提供する必要があります。また、抗がん剤の場合は、重篤な副作用も多いので、家族の方にも同席していただくと患者さんの心理的負担を軽減します。お話をお伺いする際には、座ることによって、ゆっくり話しを聴くというサインにもなりますし、他の用事が入らないように携帯などは切っておきましょう。また患者さんは、病院にかかって?、その後検査や治療を受けますが、その経過を振り返り、その間の患者さんの感情に対して共感やねぎらいの声かけをすることは、良好な信頼関係をきづくことになります。
P:患者の認識の評価
 患者さんが現在の症状に対してどこまで理解していて、どのようなことを知りたいのか、解釈モデルを把握することが重要です。患者さんに「この病気・薬についてどのように理解されていますか?」と聞くことによって、患者がどのように病気を判断して、患者が今の状況をどう受け止めているかを確認することが可能となります。病気に対する認識、医学レベルの受けとめの確認だけではなく、心理社会レベルの受けとめの確認、つまり、「病気や治療を受けとめる中で気持の上でどう感じているか」、「病気や治療を受けとめる中で生活や仕事の上でどう対処しているか」なども聞かなくてはいけない重要な情報となります。

I:患者の求めの確認
 患者さんご自身の診断や症状について「どこまで知りたいと思っているか、その情報はリスクも含めた詳細な情報なのか、もしくはリスクや難しい専門的知識をあまり含めない簡単な情報を望んでいるかを事前に確認することが必要であります。患者さんが知りたくない、知らせたくないときはその理由を確認する必要があります。必ずしも1回ですべてを解決できるのではないので、患者のテンポに合わせて情報提供をするために、事前に患者の受け止め状況や理解の程度・希望を確認しておきましょう。
 情報提供を始める前に情報収集すべきポイントは以上のとおりですが、全体を通して、患者の感情への共感的な対応も重要になります。

E: 感情への共感的対応
 がんという病気を抱え、抗がん剤治療という不安を抱えた治療に向き合う患者さんに寄り添うためには患者さんの感情を観察し、それに共感的に対応していくことが重要となります。
 まずは、患者の感情を観察、傾聴する必要があります。エリザベス・キュ―ブラロスが死の受容の5段階で、否認・怒り、取引、うつ、受容の5段階があると述べているように、バッドニュースに遭遇した患者の感情は様々な形で現れてきます。今の患者はどういう気持ちでいるのか、その気持ちが起きてくる背景はどこにあるのか、ある程度踏み込んで傾聴、観察することが必要となってきます。同情と共感は異なるといわれているように、医療者に求められているのは感情的に巻き込まれて一緒になって対応することではなくて、専門職の立場から患者の気持ちを共感的に受け止め、受け止めたことを患者に伝えることが重要となります。
 「バッドニュースを受容するプロセス」には、悲嘆作業「しっかりがっかりする」が心理学的に重要であり、そういった悲嘆作業を意識して、患者の悲しみに寄り添う姿勢を伝えることが患者の今の辛い状況を受け止めるための助けになります。

K:情報提供
 情報提供が画一的・一方的なものにならないためにもそこまでの部分で患者の個別的な状況や受け止め不安が十分に聞けていることがとても大事になってきます。
 情報提供を行う上では、専門用語をなるべき使用せずに、必要な場合は、図や字など説明媒体を使用しながらわかりやすく説明することが必要です。
 また一方的に説明しがちになりますが、患者の理解度を確認しながらステップを切って、説明をすることが重要となります。説明の際に、わかりやすく伝えることは大事ですが、患者の希望を失わせるような過度な表現は患者の不安や絶望を助長させることにつながりやすいので、十分注意して言葉を選んで伝えます。個人情報保護法でインフォームドコンセントが求められているから伝えるのではなく、患者の自己決定をエンパワーメントするためにも患者のテンポで患者が望み必要としている情報を寄り添いながら伝えることが重要となります。

S:今後の方針とまとめ
 患者が薬物療法の説明を聞いて、思っていたよりも困難が多くがっかりすることも少なくありませんが、それでも現実的で、実現可能な次のゴールを明確にして面接を終わることが重要です。また、面接の最後には今回の説明の内容を要約して、もう一度確認することも大事です。面接が終われば、もうおしまいではなく、不安や疑問が出てきたときの連絡方法や、フォローアップの体制についても伝えて、患者が安心して治療を行うことを寄り添いながら支える姿勢を伝えて面接を終わります。
 今回はSPIKESのモデルに基づくコミュニケーションの手順について説明させていただきました。全ての場面で、この全ステップを教科書通り実施しなくてはいけない訳ではなく、全体像を理解した後で状況に応じて実施していただければいいと思います。ただ一方的、画一的な説明に陥らないためには、前半の情報収集がとても重要ですので、そこは意識して実施するように努めることが大事です。また十分に患者さんの感情面に対応して共感やねぎらいの声掛けをかえすことで、長期にわたる治療に寄り添い、支える真のパートナーになっていけると思いますので、そういった医療者を目指して取り組んでいただければ幸いです。

SPIKESの手順を応用した薬剤師を対象とした映像は下記からみることが可能です。
パスワードは「cancer」です。
https://yyipe.meijo-u.ac.jp/cancer/

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発行 日本臨床コーチング研究会
住所 857-1195 長崎県佐世保市大和町15番地 佐世保中央病院内
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年3月26日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

前回に引き続き、ベーシカルヘルス産業医 佐藤 文彦 先生の記事を配信させて頂きます。
しかけやすさを醸し出す、コーチング人
昨年末に、私も利用させていただいているシェアオフィスの簡易的な忘年会がありました。
普段シェアオフィスとして使用しているフロアに、フリードリンクとケータリングの食事が少し置いてあり、人数も数十名おられ、それなりに賑やかな状態でした。
その時に、各自是非名刺交換もされて下さいとrinsho-coach.net/mt/public/hp/2019/03/-2019326.htmlのことだったのですが、私としては、全く知らない人といきなり名刺交換することはかなり億劫な状況であったため、少しだけ飲み物やお食事をいただいて、そそくさと帰ろうかとも思っていました。すると、ちょうどその時にふっと目が合った男性が、いかにも声をかけやすそうな人でした。このため、思わず名刺交換をさせてもらいました。
 この男性は外資系企業の営業マンでした。ただ、少し話をしているうちに、私の名刺にメディカルコーチングと書いてあることに気づかれました。すると、「実は私、前職はコーチAでプロフェッショナルコーチをしていたんですよ」とのこと。
そこで、あの話しかけやすさを醸し出していたのは、コーチングをずっとやってこられていたからなのだと、非常に合点がいきました。
やはり、普段から話しを聴く姿勢を持っている方は、たとえ大勢の中にいても、雰囲気だけでも話しかけやすさが伝わってくるのだなと、改めて感心しました。
翻って考えてみますと、世の中の患者さん達も、初めて医療機関を受診される時、どんな先生が担当なのだろうと、初診時はかなり不安なのであろうなと改めて思いました。
 その初診時に、非常に話しかけやすい雰囲気を持ったドクターであれば、どれほど安心するだろうとも思います。
 そういった意味でも、常に傾聴する姿勢を心がけておくということの大切さを痛感した一場面でした。
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年3月12日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

 今回は、ベーシカルヘルス産業医 佐藤 文彦 先生の記事を配信させて頂きます。
 たかが頷き、されど頷き
 昨年の夏の話しなので恐縮なのですが...。
昨年7月に、札幌で臨床コーチング研究会が開催された時のことです。
あるセミナーの時間に、会場全体で参加者の皆さんがロールプレイをしている場面がありました。その時に、会長の松本一成先生を含め幹部の先生方も数名が人数調整の都合もあり、自らこのセッションに加わられておられました。そしてその時、私は会場をぐるっと回りながら、そのセミナーを外から見学していました。
 まず、いつもの通り、相手の話しを聴く場面で、皆さん頷きながらしっかり話しを聴かれていました。
それをしばらく私はボーっと特に何も考えることなく眺めていました。すると突然、ある光景が私の目に飛び込んできました。
我に返って、何だろうとしっかりそれを見つめ直すと、ある人が周りの人に比べて倍くらい大きく、しかも、会場の端から見ていても、あれはいかにも話しを聴いてくれているだろうという雰囲気を醸し出しながら頷いておられました。では、他の人達はどうやって頷いているのだろうと、会場全体を隈なく見てみると、その人に比べると、頷きが小さかったり、しっかり相手の目を見ていなかったり、頷きそのものに気持ちが入っていなかったり、といった違いが認められました。
 正直、コーチングのセミナーでは、「頷き」については、あまり熱心に語られない箇所と言えます。その理由としては、医療者であれば、誰でもきちんとできている当たり前の動作であるからではないでしょうか。
 
しかし、そうは言っても、この簡単で非常に分かりやすい動作を極めようとすると、やはりきちんと意識したり、気持ちを込めたりする必要があるのだなと、その時改めて感じました。
 実は、その気持ちの入った大きな頷きをされていたのは、会長の松本一成先生でした。
普段、講演・指導されているだけでなく、普段から自らがきちんと実践されておられるのだと、甚く感銘を受けました。
 私も、この松本会長を筆頭とする臨床コーチング研究会で、これからもしっかりコーチングを勉強しようと、気合を入れ直した次第であります。
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発行 日本臨床コーチング研究会
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年2月26日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

前回に続き、医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院 病院長 田丸 司 先生の記事を配信させて頂きます。
専攻医を育てる コーチングスキル
第2回 「聴く」スキルを活用する
日常臨床に役立つコーチングの第2回目です。前回はコーチングとはどんなものか、どのように役立つのかという概要をお伝えしました。
今回は、「聴く」に関するスキルを中心に例文など用いてポイントを解説いたします。身近な場面で意識して用いてみることをお勧めいたします。
■指導医と専攻医Aさんとの会話
 指導医:Aさん、今日も患者さんの検査指示が1つ抜けていましたよ。これで3回目ですよ。どうなっているの?
 Aさん:はい、すみません。
 指導医:この部門に入って、もう半年になるのに、ミスが減らないのはどういうことかな?【否定型質問】
 Aさん:すみません。気を付けているつもりなんですけど・・
 指導医:前にも検査の手順について、1つ1つ確認しましたよね。こちらの教え方が悪かったかな?【クローズ型質問】
 Aさん:いいえ、そんなことはないんです。自分が悪いので、本当にすみません。
 指導医:謝ってばかりで、全然進歩してないよね。なんでミスしたのかちゃんと考えてくれる?【過去型質問】
 Aさん:はい、はい、何とか頑張ってはいるんですが、朝から予定外の作業がたくさんあって、ついつい大事なことを見逃してしまったんです。
 指導医:予定外って、よくあることでしょ?もっとしっかりしないと、仕事をまかせられないよ。【脅迫型コミュニケーション】
 まずはよくありそうな指導医と専攻医(上司と部下)の会話からです。このように上司の指導医から質問攻めになってしまうと、専攻医の立場としてはとても居心地がよくないですね。一方的な質問や決めつけが、このタイプのコミュニケーションの中心となっています。
上司-部下の関係で、一方的なコミュニケーションが長らく続いていると、職場風土としては、昨今問題になっているパワハラにつながり兼ねないとも考えられます。それではどのようなポイントを意識してコミュニケーションをすればよいのでしょうか?
 最近ニュースなどでもよく耳にするパワハラには相手の立場を尊重するという態度が欠けていることが要因となっています。コーチングでは、基本的なコミュニケーションの態度として「聴くこと」が挙げられています。最近、医療現場でもスタッフの多くが「患者さんのご意見を傾聴する」などのように使っている場面を目にすることがありますが、まずは冷静に相手の立場を理解しようと努める姿勢をもつことが大切です。
■「聴くこと」のスキル
 それでは「聴く」ための基本的なスキルについて説明をします。
①   ゼロポジション:先入観なく相手の言うことをありのまま受け止める
「聴くこと」の基本的な態度ですが、最も実践するのが難しい部分でもあります。相手の言うことをそのまま受け止め、相手が話し終えるまで言葉をはさまないようにします。いわゆ、る「傾聴」の態度で聞き役に徹することで、手も安心して話しやすくなります。
②   ベーシング:相手の話し方、態度にこちらも合わせてみる
「聴く」ための態度については、視線を合わせる、目線を合わせる、話の調子、言葉遣いを合わせる、などがあり、これらを意識することで相手が話しやすい雰囲気がつくられます。
③    うなずき:聴いていることを相手に示すことで、話を促します。
文字通り、首を縦にに振って「うんうん」「そう」「それで」など、相づちを入れながら、相手の話を聞いてみることで、会話をを促進する効果があります。
④    オウム返し:相手の言葉の語尾をくり返すこと
文字通り、相手の話す内容の語尾や文の一部をくり返しこちらが話すことで、内容を確認し、話を促進する効果があります。
会話例 A「どうしても朝起きるのが苦手で、ついつい寝坊してしまうんです。」
    B「寝坊してしまうんですね。」
「オウム返し」では、話の内容によっては、どの部分をオウム返しするかによって、話の流れが変わってしまうので注意が必要です。
次の例を読んで、どちらが医療者として上手な会話かわかりますか?
会話例1 A「やせようと思って食事を制限しているんですが、ついつい食べ過ぎてしまうんです。」
      B「ついつい食べ過ぎてしまうんですね。」
会話例2 A「やせようと思って食事を制限しているんですが、ついつい食べ過ぎてしまうんです。」
     B「やせようと食事制限をしているんですね。」
 会話の流れは、相手の心理にも影響することがあります。会話例1のように、単純なオウム返しでは、上手くいかないということを肯定する流れができてしまいますが、会話例2のように、ポジティブな部分を強調することで、前向きに頑張ろうという流れをつくることができます。
 また、会話の流れを決める要素としては、文の最後にある内容が大事であり流れを決める、ということも知っておいた方がよいでしょう。
会話例3 A「やせようと思って食事を制限しているんですが、ついつい食べ過ぎてしまんです。」
      B「食事制限をしているけど食べ過ぎてしまうんですね。」
会話例4 A「やせようと思って食事を制限しているんですが、ついつい食べ過ぎてしまんです。」
      B「食べ過ぎることもあるけど、食事制限をしているんですね。」
 会話例3と4では、オウム返しの言葉としては同じ内容で順序を変えて並べたものですが、会話例3では、食事制限が上手くいかないという流れになり、会話例4では食事制限に努めているという内容が重視されます。このように重視したい内容を最後にもっていくことが、会話の流れを決める重要なポイントになります。
 それでは、冒頭の指導医と専攻医Aさんの会話例をコーチングを意識するとどのようになるのか見てみましょう。
■指導医と専攻医Aさんとのコーチングを意識した会話例
 指導医:この部門に入って、もう半年になるのに、3回ほどミスがあるみたいけど、その件で少し話をしてもいいかな?【許可をとる枕詞】
 Aさん:すみません。気を付けているつもりなんですけど・・・。
 指導医:では、ミスが続くことについて、自分で何か思い当たることとかありますか?
 Aさん:まだ慣れていないのか手順が上手くのみこめなくて。自分が悪いので、本当にすみません。
 指導医:そうか、手順がまだ慣れてないってことなんですね。【オウム返し】
 Aさん:はい、何とか頑張ってはいるんですが、朝から予定外の作業がたくさんあってついつい大事なことを見逃してしまったんです。
 指導医:予定外の作業で大変なんだけど、自分でも頑張ってみようと思っているんですね。【オウム返し:頑張っている内容を強調】
     これから朝の作業を上手くこなすために、何か解決策がないか一緒に検討してみましょうか?【未来型質問】
 Aさん:はい、宜しくお願いいたします。                                            
○今回のまとめ
 コーしました。チングの基本的な態度として、今回は「聴く」スキルを中心に例文を交えて解説しました。コーチングは学問というよりも、ナベやカマのような実践の道具です。少しコツをつかめば、普段のコミュニケーションにも役に立つものと思います。ぜひ普段の会話などでも応用してみてください。
 
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年2月13日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 
今回は、医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院 病院長 田丸 司 先生の記事を配信させて頂きます。
 
専攻医を育てる
コーチングスキル
 
第1回 臨床におけるコーチングの活用
 
臨床現場や若手指導において、コミュニケーションに困った経験はありませんか。
コーチングは相手の自主性を尊重しながらポジティブに、未来志向の解決をめざすコミュニケーションの方法です。この連載では、臨床場面でのコーチングの概要を解説し、身近な場面でのコミュニケーションのヒントをご紹介いたします。
 
*■「コーチングって何?」*
「コーチングって何?」と訊かれるとどのような答えが思い浮かぶでしょうか?全く何かわからない人から、ある程度コーチングを学んだことがある人まで答えはさまざまだと思います。ここで着目してほしいのは、このように「~って何?」と訊かれると、その人それぞれに答えを見つけようと考えたり、自分の言葉で表現しようとしたりすることです。
これは、コーチングでいうと、オープンクエスチョンという質問のスキルで、はい/いいえではなく、自分の言葉で回答を求めるものです。至極当然のことではありますが、人の思考は言葉によってなされています。そのため人と人の会話において、ちょっとした言葉の使い方や会話の仕方によって相手に与える影響が違ってきます。誰しもちょっとした言葉が上手く伝わったなと感じたり、あるいは失敗したなぁなど、いくつかの経験は思い当たるのではないでしょうか。
 それでは相手に良い影響を与える言葉の使い方とは、どんなものでしょうか?その答えのヒントがコーチングにあります。コーチングとは、会話を通して相手の心を軽くしたり、ポジティブな問題解決を促すように支援するコミュニケーションの方法で、ビジネス、教育などの分野からはじまり、最近では医療の分野でも注目されるようになってきました。
 さて、冒頭の「コーチングって何?」に対する答えとしてはさまざまなものがあるのが実情ですが、参考までに1つの定義を紹介します。
「コーチングとは、対話を重ねることを通して、クライアントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセスである」(コーチエイ)。
 
*■医療界に広がりつつあるコーチング*
 最近行った講演会にて「コーチングという言葉を聞いたことがある人はいますか?」と聞いてみたところ、おおよそ半数の方が挙手されました。また、「コーチングを講演会などで学んだことがある人は?」との問いでは1割くらいでした。以前に比べてコーチングという言葉は浸透してきているのを感じますが、まだ学んだという方は少ないようです。しかしながらコーチングに関する話題や講演会などは多くなっており、臨床の学会でも取り上げていただく機会が増えているようです。では医療者がコーチングを学ぶことで、どのような成果が得られるのでしょうか?
 最もわかりやすいのが、医療者が患者さんに対してコーチングを用いて医療面接をする場面です。検査や治療法の選択、疾患指導などの場面において、コーチングのスキルを用いた会話は有用であることが知られています。特に糖尿病などの慢性疾患指導、禁煙指導、運動療法などの生活疾患指導などの分野で相性がよく、有用性があるとの発表がなされています。(出江紳一:治療、98(9):1458-1463,2016)。もちろん教育分野でも用いられていますので、ここで取り上げる医療者への教育にも応用されています。現在、研修指導のための指導医講習会のプログラムには、コーチングを学ぶことが盛り込まれています。
 医療分野でのコーチングの活用は、2000年頃から始まっています。私は、2006年に発足した日本臨床コーチング研究会に当初から参加しており、医療分野での応用について学んだり普及するための活動を続けてきました。この研究会の趣旨を一言でいえば「医療者の、医療者による、医療者のためのコーチング」をめざしており、コーチングを学んできた団体、流派などによらず医現場で役立つコーチングを追及する実践的な団体です。本格的なコーチング資格を取得するためには、いくつかのコーチング団体に所属し費用や時間の負担が大きいのですが、この研究会では医療者の入門に適したプログラムや医療者ならではの題材を用いてコーチングの活用をめざしています。
 私がこれまでコーチングを学んできた感想としては、コーチングは医療活動のうえで非常に有益であり、コーチングを学んでいる人のなかには、自身のライフスタイルに影響している方もいるほどです。
 
*■コーチングとティーチング、カウンセリング*
 コーチングの考え方の基本としては、相手の自主性、主体性を尊重しており、そのためのスキルを用いて会話をするため、手間と時間がかかります。忙しい日常臨床においてそのような余裕がなく、特に医師からは「どのようにコーチングを忙しい臨床場面で用いるといいのか?」といった質問を受けることがよくあります。患者さん、スタッフとの一般的な医療現場の会話場面では、情報伝達を中心とした会話が多いものです。(ティーチング)。そのような場面ではティーチング主体のコミュニケーションでおおよそ問題はありませんが、重要な方針を決定する場面では、コーチングを用いた会話にスイッチすることを心がけています。そうすることで、結果的には自然と相手との信頼関係が生まれ、その後の会話もスムーズに進むと思います。コーチングとティーチングは、どちらも重要であり、必要な場面や対象者に応じて使い分けることができればよいでしょう(表1)。
 コーチングと同じような手法として、精神科領域で用いられるカウンセリングが知られています。使われているスキルとしては同じようですが、カウンセリングが主に心理的にネガティブな問題を解決するのに対し、コーチングが比較的健全な心理状態が対象となり、ポジティブで未来志向な発想で、特に能力開発を目的とする場合に有用とされています。
 
*表**1** コーチングとティーチングの比較*
 
*コーチング*
 
*ティーチング*
 
*メリット*
 
・自発性や応用力を高める。
 
・個別性を活かすことができる。
 
・学習意欲を高め、潜在能力を活かすことができる。
 
・重要だが時間のある場面で活用しやすい。
 
・基本的な知識や技術を伝える。
 
・多数の人を対象にできる。
 
・速く成果が期待できる。
 
・緊急的な場面で活用しやすい。
 
*デメリット*
 
・相手に基本的な知識、技術が必要。
 
・対応に時間がかかる。
 
・成果が意欲に左右される。
 
・同時に多数の人を対象にできない
 
 (チームコーチングを除く)
 
・受け身の姿勢となる傾向があり、
 
自主性が損なわれる。
 
・相手の個人的な事情に関する課題に
 
 は対応しにくい。
 
*■社会的な流れのなかで*
 昨今のニュースをみていると、立場のある人のちょっとした発言や言い回しなどが、大きなニュースとなって扱われているのを目にします。世の流れは個別性、多様性、弱者からの視点が重視され、そのため、言葉への配慮が特に必要とされる時代となっています。医療現場でもそういった流れに無縁ではありません。コーチングの技術が日常臨床のちょっとしたヒントになればと思います。次回からは、具体的なコーチングスキルについてご紹介していきます。
 
*○今回のまとめ*
 コミュニケーションの1つの方法としてコーチングがあり、自主性、個別性、能力開発に向いているなどの特徴があります。コーチングを学ぶことで臨床現場、スタッフの教育にも活かすことができます。コーチングとティーチングを上手く使うことでコミュニケーションをよくしてみましょう。
 
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このページの更新日:2019/02/13

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年1月22日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

 今回は、社会医療法人財団 白十字会 佐世保中央病院 糖尿病センター長 松本 一成 先生の記事を配信させて頂きます。
明けましておめでとうございます。
 新しい年、佐世保中央病院では「院内コーチング道場」を開催しました。
最初に取り組んだことは、クライアントに関心を持つことです。コーチがクライアントに「あなたはどんな人ですか?」と質問して対話を続けてみました。
コーチは相手の自己開示に対して、徐々に関心を深めていきます。クライアントは傾聴してくれるコーチに対して信頼感を高めていきます。
 さて、対話が終わった後でクライアントにどのような気づきがあったのかを尋ねてみました。すると、ある人が以下のような発言をしました。「私は石橋をたたいて渡る性格の人間だと思っていました。そして、それをコーチに説明しているうちに、気づきました。ちょっと違うと。私は渡りづらそうな石橋を見ると、別のルートを探す人間だったのです。思わぬ発見でした。」
これは明らかなオートクラインですね。頭で考えているときには気づくことが出来ていませんでしたが、自分の話を自分で聴きながら気づきを得ています。
 別の人は、「私はこのような考え方や行動をすることがあって、それが自分の欠点だとずっと思っていました。しかし、コーチからこういう場面では強みになるのでは?と言われて驚きました。」これは、ジョハリの窓の「気づかない窓(blind self)」ですね。
単純なテーマの対話であっても本当に様々な発見があります。
 新年は始まったばかりです。これから、単純に対話の機会を増やすだけでも変化が生まれるかもしれません。本年もよろしくお願いします。
 佐世保中央病院 松本一成
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2019年1月8日

会員のみなさんこんにちは。
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今回は,札幌学院大学 人文学部 教授 北田 雅子 先生の記事を配信させて頂きます。
札幌学院大学 人文学部 教授 医学博士
専門 健康教育、ヘルスプロモーション,タバコ・コントロール
動機づけ面接国際ネットワークメンバー トレーナー
動機づけ面接調査研究所 代表
日本臨床コーチング 幹事
テーマ:患者さんに伝わる情報提供
 情報を提供するみなさんは,医療・治療と疾患の治療において専門家です。患者さんの多くは,自分の健康や病状の進行が心配でみなさんを訪れるでしょう。時には,自分の健康管理や治療において,あまり正確に現状認識をしていない患者さんもいらっしゃるでしょう?。そんな時,専門家であるとともに,病気が進行した先の深刻な状態を知っているみなさんは,患者さんに,強く行動変容を勧めることもあるでしょう。
 今回は,患者さんにどのように情報を提供すると,患者さん自らが行動を変えるように動きだすのか?
動機づけ面接のエッセンスから紹介してみたいと思います。
1》 動機がない患者さん?
 行動変容の準備は,人それぞれ凸凹しています。血糖値を管理したい,糖尿病の合併症は避けたい,と思っているにも関わらず,目の前の生活改善には積極的に見えない方もいらっしゃるでしょう。患者さんが,定期的に病院を受診しているにも関わらず,医療従事者であるみなさんが「動機がない患者さん」として,その方と接するのは非常にもったいないと思います。なぜなら,血糖管理における行動変容は非常に多く存在するので,食事については準備性が低くても,運動には前向き,服薬治療は嫌がるけど,間食を減らすことは多少,やる気がある,という具合に,目標行動への意欲は凸凹していることが多いのです。
 目の前の方が意欲を示している行動から,徐々にライフスタイルを変えることは,最初は遠回りに見えても,最終的には,早く減量ができたり,血糖値が安定したりと望む結果が得られることもあります。
 医師:○○をやってください。このままだと・・・
患者:はい。わかりました。
 数ヶ月後
医師:この前,○○をするっていいましたよね
患者:すみません。時間がなくて・・・それに息子夫婦が孫を連れてきたので・・・
このような会話を少しでも変えてみたいと思いませんか?

2》 患者さんの理解を確認しながら情報を提供する
先の会話を少し,違った雰囲気に変えたいとき,どのような会話のスタイルにすればよいでしょうか?
みなさんが持っている情報を患者さんに提供するとき,または,提供すること自体が必要なとき,動機づけ面接では,いくつかの注意点があります。この注意点を意識するだけで,相手からの心理的な抵抗を最小限に抑えることができ,相手の行動変容を後押しすることが可能だからです。
いくつか,情報を提供するスタイルがあるのすが,今回はその中のひとつをご紹介します。
まず,相手になんらかの情報を提供したいときには,事前に相手からの許可を得るようにします。そして,相手に情報を伝えます。その際に,情報の量には気をつけます。そして,最後に相手に確認する,というスタイルです。実際の例を見てみましょう。
管理栄養士:私から,バランスの良い食事のとり方について,いくつか提案したいのですが,よろしいでしょうか?(許可を得る)
患者:はい,よろしくお願いします。
管理栄養士:野菜をもう少し食べていただくとバランスが整うだけでなく,食後の血糖値の上昇も緩やかになると思うのです(提供したい内容を,まずはひとつ相手に提供)。
患者:ええ,私も野菜は不足していると思います。どうすれば良いですか?あまり難しいことは出来ませんが。
~管理栄養士がパンフレットを広げながら情報を提供する~
管理栄養士:私から,このパンフレットを参考にお話させていただいたのですが,やってみたいなぁ,とかこれならできるかも?と思うことがあれば教えていただけますか?(相手の理解を確認する)
患者:そうですね~・・・社食のメニューにも小鉢があるので,それを追加することはできそうです。それから,自分が好きなカレーライスのエネルギーが意外と高いのでびっくりしています。カレーライスはやめて,定食を選んでみたいと思います。
最初は慣れないかもしれませんが,事前に相手に許可を得てから情報を提供する,というスタイルに変えるだけで,意外と早く,相手との治療関係が築けることがあります。是非,試していただければと思います。2018年10月27日
参考文献:北田雅子,磯村毅著,医療スタッフのための動機づけ面接法,逆引きMI学習帳,医師薬出版㈱会社,2016.
Marc.P.Steinberg, William R Miller, motivational interviewing in diabetes care, Guilford press,2015.

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発行 日本臨床コーチング研究会
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年12月25日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

  今回は,くがはら内科クリニック 院長 久我原 明朗
先生によるチームコーチングに関する内容を3回シリーズで配信させていただきます。
【コーチングらしさって何だろう? その3 臨床でコーチングを活用するための工夫(9ステップ臨床コーチングフロー)】
  前回は「コーチングはやるべき事を人にやらせるための道具ではない」という話をしました。
では、臨床現場では、相手の行動変容を期待してコーチングを活用するのは間違いなのでしょうか?
治療上どうしても「禁煙に取り組んで欲しい」「運動を継続して欲しい」「食事制限の努力をして欲しい」と伝えたい衝動に駆られます。
でも、そのまま伝えても行動は変わらないことは多々ありますよね。
操作しようとしてもダメ、かといって放置もできないし、、、どうしたらいいのだろうか?
そんなジレンマで悩んだ時期もありました。
親しくさせて頂いているYコーチとの検討を重ねた結果生まれたのが「9ステップ臨床コーチングフロー」という話題の順序です。
このツール(話の流れを図示して一覧性を持たせたもの)は試作段階ですが、個人の使用経験ではとても良い感触があります。
(1)まず本人の現状や将来像を話して頂き、相手の見ている景色を自分も見るような気持ちで傾聴します。
ここで従来のGROWモデルを意識しつつも、順序に縛られすぎずに柔軟に質問をし、理解に努めます。
(2)次に、医療従事者としての現状の理解と未来予想について説明などをし、質疑応答をします。
ここでもGROWモデルを念頭に置きつつ話をしますが、あくまでも個人の見解で情報として伝えます(行動を求めるモードではない)。
(3)最後にお互いの行動の選択肢を共有し、具体的な計画について対話をします。
大きく分けると3つのパート、全部で9つのステップの全体像を意識しながら対話を続けていくと、お互いの立場や意見を尊重しながらも未来に向けた前向きな話し合いができるようになっています。
これはコーチングを臨床現場で活用しやすいようにするための工夫の一つですが、状況や相手の様子を良く観察し、自分の気持ちもリフレッシュ(アップデート)しつつ丁寧に対話を進めていければ、どのようなスキルや型を用いても良い方向に進んでいくのではないかと感じています。
これからも試行錯誤を続けていきたいと思います。
(ここまで)
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年12月11日

 会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

 今回は,くがはら内科クリニック 院長 久我原 明朗 先生によるチームコーチングに関する内容を3回シリーズで配信させていただきます。
【コーチングらしさって何だろう? その2 型を手放す】
 前回は「コーチングによるワクワク感」のお話しをしましたが、その出来事の少し前に、何でもかんでもコーチングの技術を使おうと考えていた時期もありました。
でも、どこか上手く行かない違和感も感じていました。
 意気揚々と診療にあたるのですが、どうも上手く行かない。
患者さんが「こっちの流れに乗ってこない感じ」です。
基本の型どおりにやろうと試行錯誤を繰り返しますが、モヤモヤが募るばかりでした。
 学んだ技術を使って「なんとか禁煙させよう」「間食を減らさせよう」・・・あれ?でもこれって、誰の目標?
 「コーチングを使えば、望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすことができ、血糖値も下げることができるのではないか?」と、いろいろな期待をしていましたが、これらは医療者の掲げる目標であって、その人自身の「やりたいこと」ではありませんでした。
 「コーチングはやるべき事を人にやらせるための道具ではない」
 数年かかってぐるっと回ってスタートラインに戻って来た感じがしました。
先に述べました「こっちの流れに・・・」って考えている時点でクライエントを尊重してませんよね・・・(汗)。
 それからはコーチングを心理操作術のように使おうとしてないか、自分で観察するように心がけるようにしています。
コーチングの型をあえて手放して、基本の心構え(コーチングマインド)を忘れないようにするのが大切と思う今日この頃です。
(つづく)

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年11月27日

 会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

 今回は,くがはら内科クリニック 院長 久我原 明朗 先生によるチームコーチングに関する内容を3回シリーズで配信させていただきます。
  【コーチングらしさって何だろう? その1 コーチングフローのパワーを実感】
 私は北海道のある地方で内科のクリニックで診療しておりますが、開かれた質問、傾聴、承認という基本的な関わり方を心がけるだけでも診療の現場では大きな進歩がありました。
 一方で、ある日ふと、「質問、傾聴、承認という態度はいろいろな心理療法や対人援助の基本と共通しているなあ。コーチングらしさってなんなんだろう?」と素朴な疑問が心に浮かんでいました。
 ある日、私の師事するYコーチに15分ほどの手ほどきを受けた当院のスタッフSからいくつかの質問を受けました。
 スタッフS「今の生活に点数をつけるとしたら何点ですか?」
私「う~ん、◯◯点かなあ」
スタッフS「100点満点の生活というと、どんなイメージですか?」
私「そうだなあ、◯◯って感じかなあ」
スタッフS「100点に近づけるために、まず今日から一つやるとしたら何をしたいですか?」
私「まずは◯◯からするかな」
 基本の型どおりのほんの数分のやり取りでした。
しかし、何だか自分の心の中は道が明るく照らされたような不思議な感覚がありました。
 これはGROWモデルを用いたコーチングフローの会話でした。
この時の体験は「コーチングのパワーってこれなんだ」「面白いなあ」と心の底から興味が湧いてきたのを覚えています。
 コーチングってなに?という問いには、人の数だけ答えがあるかも知れません。
私個人としては、GROWモデルに基づいたコーチングフローは一つの特徴的な部分で、技術として伝えることもできると感じています。
そして、「ワクワク感」「明るい未来が見えてくる」そんな体験をもたらすのがコーチングの醍醐味なのかなと改めて思いました。
(つづく)

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年11月13日

■□ 日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年11月13日 ■□

 会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 今回は医療法人白十字会 佐世保中央病院 糖尿病センター センター長 松本 一成 先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
 新 日本臨床コーチング研究会 会員配信メール No.11
 最近、タイプ分けに関するワークショップを行う機会が増えています。
 血液型占いもある意味ではタイプ分けですよね。そこで、ワークショップの開始時にアイスブレイクとして、隣席の人とお互いに自己紹介をします。その際に、血液型も紹介し、自らの行動パターンも説明してもらっています。例えば、「私はB型です。B型人間はマイペースの人が多いと言われているのですが、私もまさにそうなのです。」といった具合です。
 さて、ワークショップがはじまると、4つのタイプ分けの解説を行います。解説後には、簡易コミュニケーションスタイル・インベントリーを用いて自己診断します。自分のタイプがわかったら、その強みは何かを調べます。例えば、「コントローラーならば仕事が速い」などのように。
各々のタイプの相手とうまくコミュニケーションをとるための方法について学習したら、今度は、タイプを知らない相手と対話して、相手がどのタイプなのかを推理するワークをします。全員が正解するわけではありませんが、絞り込みは結構できる人が多いようです。例えば、「この人はアナライザーではないよね」などのような感じです。
  血液型にしても、タイプ分けにしても、自分の(相手の)行動に特徴が表れるので人間観察に興味が湧いてきます。タイプ分けはゲーム感覚で学習すると楽しく学べるように思います。
 佐世保中央病院 松本一成
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年10月23日

 会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

 前回に引き続き、医療法人偕行会 偕行会城西病院 勢納 八郎 先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
 +-+-
ACPが必要とされる時代への環境変化/ICからSDMへ、PSからPXへ
偕行会城西病院 勢納八郎
  愛知ACPプロジェクトの講師人材養成講座に参加させていただいた。
 ACPはAdvance Care Planningの略で、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスのことである。そこには自らの意思を事前指示書にしたためたり、代理意思決定者をあらかじめ指名しておくことを含んでいるが、それだけにとどまらず、何度でも訂正可能で間違いのない意思確認をすることに重点が置かれている。むしろこうした意思確認のプロセスそのものと言ったほうがふさわしい。
超高齢社会を迎えた今日では、寝たきりやフレイルが増加しており、緊急時にもそれ以上の延命を希望しない場合が増加している。
老人ホームなどの介護現場で緊急時対応を間違いのないものにするためには、こうしたACPの取り組みが欠かせない。
 さてそのACPであるが、いざ実践しようとするとデリケートな問題が山積している。
 ① いつその話題を切り出せば問題にならないのか?
② 話の記録をどう共有し、また訂正するにはどうしたらよいのか?
③ そもそもこうした取り組みで本人の意思確認が本当にできているのか?
などなど・・・枚挙に暇が無い。しかし逆にこうした問題があるからこそ、単なる事前指示書や代理意思決定者の任命にとどまらず、ご本人の意思確認を随時行って関係者で共有するプロセスそのものに重点が置かれていると解釈している。
この際私がもっとも重要と感じたのは、ご本人と医療者の間のコミュニケーション:Shared Decision Making(SDM)である。
SDMは患者と医療者が対等の関係で、あらゆる可能性について十分に情報共有した上で、患者の好みやこだわりと医療者の価値観やお勧めも加味して、双方向に十分話し合った上でなされる。
双方向での十分な話し合いを必要とする点ではInformed Consent(IC:十分な説明と同意)より、さらに一歩患者側に寄り添ったものとなっている。
重要なのは説明や同意そのものよりも、十分に意思表明していただけたか、意図を汲み取れたかと言う点である。もはや同意書のレベルを超えてしまっている。ACPがプロセスそのものといわれる所以である。
もうひとつの話題を提供したい。
患者満足度(PS : Patient Satisfaction)という言葉はなじみ深いが、これを上げるために患者経験価値(PX : Patient Experience)を重視すると言うのは最近知ったばかりである。
一般に基本的価値や期待する価値、願望価値と言った顕在的ニーズが満たされないとクレームになるが、こうしたニーズが満たされた上に、予想外価値を経験することで人は感動し、共感や愛着、信頼を寄せるようになる。
こうした言わば潜在的ニーズは患者目線にならない限り理解不能であるが、このニーズを満たし、ひいてはLoyal Customerとしての獲得を目指す取り組みがある。クリーブランドクリニックが先進事例である。
PXではCustomer(Patient) Journeyと言われるユーザー目線での消費行動を時系列で把握し、それぞれのプロセスでの思考や感情をリアルに理解することが前提となる。各プロセスにマッチした予想外価値を構想することでLoyal Customer獲得の可能性が開かれる。そういう意味ではPXの取り組みには終わりが無い。
この点で満たされたかどうかの結果を問うPSとは違っており、PXがプロセス志向と言われる所以である。
ACPとPX二つの新しい概念がどちらもプロセス志向であることは興味深い。いずれも思考や感情を理解し、患者と同じ目線に立とうとする点で共通している。
当然コミュニケーションは双方向となり、この点でコーチングスキルはいずれの場面でも有用と思われる。
今後PXに取り組んでいくかどうかは別にしても、医療・介護業界のみならず、近未来の社会においてコミュニケーション能力がますます重要となってくるものと思われた。
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年10月9日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 今回は、医療法人偕行会 偕行会城西病院 勢納 八郎 先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
 +-+-
これもコーチング? 不思議な禁煙「指導」
偕行会城西病院 勢納八郎
 糖尿病の方の中にしばしば手足の冷たい方がおられます。
冬場に足が冷えるという症状を訴えることもありますが、夏場にクーラーを使うと足が痛むそうです。
大抵は検査で閉塞性動脈硬化症と診断されるのですが、その多くが喫煙者です。
タバコが原因の一つであることを伝えると、あっさりと「タバコ止めます」とこともなげにおっしゃいます。
以前の私であれば、直ちにオウム返しを行い、固まりをほぐして、具体的な目標に落とし込んで・・・とやっていたところですが、最近ではもう少し別のアプローチを行っています。
 ○○「はい、ではタバコを止めますね。」
私「そうですか、そう願えればうれしいです。・・・ただ、少し心配な面があります。もし○○さんが本当はタバコを止めたくないのに、私が無理を言ってやめてもらうのであれば、それはそれで少し心苦しい気がします。」
○○さん苦笑
私「もともとタバコを止めたいと思っていたのに今まで止められなかったのか、本当は吸い続けたいけれど医者に言われたので仕方なく止めないといけないと思ったのか、どちらかというとどちらでしょう?」
○○「・・・本当のところと言われれば、そりゃ止めたくはないですよね。でも足の切断の話を聞いたら怖くなったのです。それで止めないといけないのかな?と思い始めました。」
私「そうなんですね、本当は吸いたいけれど、体のことを考えて止めないといけないかな?とお考えなのですね。」
○○「はい、そうなんです。」
私「では足の切断に至らない程度に吸い続けたいというのが本音のところでしょうか?」
○○「そう、それ。まさに、それです。」
私「では、こういうのはいかがでしょう?○○さんが健康な状態を維持したまま、なるべく長くタバコを楽しんでいけるように、私も医師の立場で協力させていただくというのはいかがでしょうか?」
○○「ええっ!そんなこと考えもしませんでした。それができるのであれば最高にうれしいですよ。」
私「できるかどうかは結果論であって保証は致しかねるのですが、○○さんが本音のところではタバコを吸い続けたいと思っていらっしゃるところをしっかりと見据えたうえで、健康を害しない範囲の妥協点を探ってみようと思います。」
○○「是非そうしてください。」
私「○○さんの現在の状態に対して、タバコが悪いことは明らかなので、方針としては本数を減らすということしかないように思われますが、いかがですか?」
○○「それは自分でもそう思います。ぜひ本数を減らすことに挑戦してみたいです。」
私「本数を減らしたいとお考えなのですね。・・・では、こういう方法はいかがでしょうか?・・・どうしても吸いたいときは遠慮しないでしっかりと吸う。・・・でもそれほどでもないとき、何となく手持無沙汰で、つい惰性で吸ってしまうようなのはできるだけ我慢するというのは?」
○○「それくらいならできます。どうしてもの時は吸ってもいいんでしょう?ぜひやりかたを教えてください。」
私「実は調査によれば朝一番のタバコが一番止めづらいのだそうです。・・・従って朝起きぬけのタバコはぜひ吸ってください。そのほかにもこういう時のタバコはぜひ吸いたい、と思われるのはどういうときのタバコでしょう?」
○○「それはやはり、食後のタバコでしょうね。」
私「では3食しっかり食べた後のタバコもしっかり吸ってください。・・・そのほかにありますか?」
○○「えーっと、あとは何となく吸ってただけだからなぁ・・・。」
私「そうなんですね、後のタバコはなんとなく吸ってらっしゃったのですね?・・・そういうタバコはできるだけ吸わないように我慢しましょうか?」
○○「わかりました。それくらいならなんとかできるかもしれません。」
私「そうですね、後のタバコはできるだけ吸わないように我慢してください。・・・でも我慢しすぎてストレスが溜まると思ったら、その時は思い切って吸ってください。・・・そうした場合でももう駄目だとかこの方法はうまくいかないと決めるのではなく、今までより少しでも減らすことができたら、そのことを評価した方がよいと私は思います。途中で少しくらいうまくいかないことがあっても、減らしたい気持ちを維持していること自体がとても立派だと思います。ぜひ無理のない範囲で、気軽に挑戦してみてください。」
  禁煙指導の場面で、意外なほどあっさり禁煙を約束する方は、それまでの喫煙歴や病状に照らせばいかにも不自然です。
 その姿勢は本当に禁煙に取り組んでいる方の、苦し気で決意に満ちた態度とは似ても似つかないものです。
 そう、彼らは表面上禁煙を約束することで、それ以上踏み込まれないように防御しているに過ぎません。
 もしそんなに簡単に止められるものなら、これほど症状がすすむまで止めるチャンスが本当になかったのでしょうか?
今まで禁煙できていないこと自体が、禁煙が簡単でないことの何よりの証拠です。
それなのに簡単に禁煙に同意するのは、面従腹背というものです。
ひとたびこのモードに入ると、クライアントは聞く耳を持っていません。
ただただ眼前の嵐が通り過ぎるまで、こちらの言うことを否定せずにやり過ごしているだけです。
世の中全体に禁煙ムードが広がって、それでも吸い続けてこられた方はある意味で百戦錬磨です。
こうした方は、日頃からお説教を聞き流すことに慣れてしまった人と言っては先入観が過ぎるでしょうか?
こういう場合には、相手の気持ちに合わせて、吸いたい気持ちがあることを承認することから始めるしかないと考えます。
吸いたい気持ちが大部分を占めている人に対して、禁煙以外に方法がないようなことを言えば、対立する危険性が高くなります。
タバコをできるだけ長く楽しみたいという本音の部分にペーシングすることでコミュニケーションの扉が開きました。
吸いたい気持ちにペーシングをして、「こういう時のたばこは是非吸ってくださいね。」と言いながら、それ以外のタバコをなるべく我慢する道を示しています。
私は最近このアプローチで節煙を進めていますが、ほとんどの場合、短期間のうちに1日5本程度まで減らすことができるようです。
 あとは型通りのコーチングを行いながら外来診療を続けていくことで、自然と禁煙に至る方も出てきます。
 もちろん、5本のレベルで止まってしまう方もいらっしゃいます。
 そういう方々も含めて自己効力感が高まると見えて、大幅な逸脱は認められません。
節煙も糖尿病治療も主体的に取り組んでいただいています。
 今回の例は必ずしも典型的なコーチングのスタイルではないかもしれませんが、コーチングのスキルをところどころ使いながら、少なくともShared Decision makingにはなっているのではないでしょうか?
  以上、一風変わった禁煙「指導」をご紹介しました。
 皆様のご批評をお待ちしております。
(日本臨床コーチング研究会 認定コーチ)

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このページの更新日:2018/10/09

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年9月25日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 前回に続き、千葉大学付属病院 横尾 英孝 先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
 +-+-
「バランスよく現状に目を向ける」
 外来などで糖尿病患者の診療をしていると、患者さんができなかったことや悪化してしまったデータに目が行きがちです。
食事療法や運動療法などの生活習慣の是正が治療の基本であり、血糖や脂質、血圧の値が高いと合併症が進行しやすくなることが分かっているだけに医療職としてはある意味当然のことかもしれません。特に、理想的な療養と正反対の行動を患者さんがとったりすると、患者さんのためを思うがあまりつい厳しい指示命令口調になったり、なぜそのようなことをしたか詰問してしまったりするのです。ただ、ここで必要なのは患者さんが自ら必要性を認識して行動変容を起こすことです。そのためには、どうしてそのような行動に至ったか、今後どうしていくかを一緒に寄り添って考えていく姿勢が求められます。
もう一つ重要なことは、できていることにも着目することです。
コーチングは相手の強みをさらに伸ばすことができます。できなかったことに対する方策を考える一方で、「心がけていたことは何ですか?」「できていたことは何ですか?」と患者さんに聞いてすかさず承認の言葉をかけ、その意識や行動を維持・強化することを最近私は心がけています。
 医療職相手のコーチングをしていても思うことがあります。世間でも「イメトレ」と言われるように、理想の状態、目標を達成したときの状況をイメージすることはその実現を促進します。しかし、それだけでは不十分なのです。私がこれまでにコーチをした医療職の方で、特に大きな成果を挙げた方にどんな関わりをしていたかを振り返ってみると、イメトレの他に以下の2つのことに着目していました。
1つ目は、目標達成に向けての具体的なプロセス、2つ目は目標達成に向けて妨げになるものや気がかりの明確化と対策です。
例えば、一か月後の学会シンポジウムの発表で優秀賞を目指すという場合には、本番までの期間を1週間ごとに分割し、毎週何をやるかを具体的に考えてもらいました。その際、他の業務の対処(人に頼めるものは頼む、先送りできる業務は後回しにする、ずっと気になっていた小さな雑用は先に終わらせる)やギリギリに追い込まれないための対策(完璧な発表スライドに仕上げる前に早めに指導医のチェックを受けるなど)も話題にしました。
 できなかったことや悪くなったことだけではなく、できたことや良くなったことにも目を向ける。理想の状態をイメージするだけではなくそこに至るまでのプロセスやトラブルシューティングもはっきりさせる、このバランスこそが壮大な目標達成の鍵だと私は考えています。
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このページの更新日:2018/09/25

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年9月11日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

 今回は、千葉大学付属病院 横尾 英孝 先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
 +-+-
「医師へのコーチングで感じたこと」
 私は、コーチングを学び始めた頃から医学生や医師への効果に関心がありました。
自分が学生時代の頃からアンバランスな医学生や医師を見て思うところがあったのです。
分厚い医学書を読みふけっても単位を落としてしまう、学業は優秀なのに診察手技や患者とのコミュニケーションが大の苦手、
自分から仕事を抱え込んで心身が疲弊している、患者から慕われているのに学生や他の医療スタッフにきつく当たるとか、
どうしてこのようなことになってしまうのだろうと・・・。
確かに、効率的な勉強のコツとか、傾聴や承認のスキルなんて授業ではもちろん医師になってからもきちんと習う機会はほとんどありませんでした。
ところが、授業に出なくても要領よく試験に合格する医学生、患者さんが泣いて感激するほど聞き上手な研修医、
定時に外来を終わらせて夜は家庭や趣味の時間を楽しむ医師だって必ずいるんです。
一体その差は何なのでしょうか?
 ここ数年間で、私は研修医から主任部長に至るまで数名の医師のコーチングを担当してきました。
扱ったテーマはタイムマネジメント、感情やモチベーションのコントロール、医療スタッフとのコミュニケーションなど。
そして、得られた成果として多かったのが自分を客観視できるようになった、
創意工夫をしながら効率的に仕事ができるようになった、自己肯定感が向上した、などです。
コーチングが役に立てたのは嬉しかったのですが、何が機能したのかはっきりせずモヤモヤした日々が続きました。
 しかし、大学病院で医学教育を本格的に学んでいくうちに、今回のコーチングで高めることができたのは、いわゆるメタ認知力や省察力だったのではないかと考えるようになりました。
自己の言動や状態を振り返り、より上位のレベルから俯瞰してその是非や今後の対策を検討する力のことです。
医師は患者さんの急変などにも冷静に対処するよう養成されているはずなのですが、自分自身が置かれている状況や湧き上がる気持ちを第三者的にとらえたり、長期的な見通しを立ててそれに基づいた軌道修正をしたりというのは必ずしも得意ではないのかもしれません。
医師は多忙で不確定要素や不測の事態に巻き込まれることが多い職業ですが、だからこそ省察する習慣を身に着け、メタ認知力をもっと磨く必要があるのではないでしょうか。

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このページの更新日:2018/09/11

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年8月28日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 前回に引き続き,
国保旭中央病院 糖尿病代謝内科 大西俊一郎先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
*大西先生はトライアスロンに取り組んでおられる「鉄人コーチング医師」です。
大西先生ならではの楽しくて役に立つ配信記事です。
 +-+-
「とてもとても澄みきった湖」
のようなコーチングをできたらいいな、と思うことがあります。
そのために?切なことを考えてみました。
(1)相?の考えを濁さない!
コーチングの際、時に?分(コーチ)の考え?をその場に出してしまったり、話を誘導してしまうことに気づく瞬間がありませんか?
「極?相?の考えを濁さない」コーチを?指すメソッドがあるそうです。
「洗練された?本語!」を使えるようになりたいです。
 http://cleanlanguage.jp/clj/
 (2)選択権は相?に!
?は3 つ以上の選択肢を与えられると、「?分で選んだ」という?主性を感じるそうですが、
常に3 つ以上の選択肢を相?に与えながら話を続けていくことは、とても難しい事だと思います。
相?が?分で選ぶ機会を増やすことを意識していきたいですね。
 (3)コーチの?を出さないことも時には必要!
コーチにも様々な?があり、コーチングを受けている時に「このコーチとはなんか合わないなぁ」と思ったことがあります。
?と?の間にツールがあると、合わない?も変わりうるのではないかと思います。
 (4)考えの?語化をスムーズに!
コーチングでは全てを相?に任せる訳ではなく、考えを?語化するお?伝いとして相?に関わっていきますが、これまでに考えたことがないようなことを考えたり、思いや考えは頭の中にあるのだけれどそれを?語化することが苦?な?がいます。
コーチの個性によらずに?語化を助けるツールがあると話が進みやすいですね。
 (5)五感を使う!
コーチングにおいては理想やゴールをありのままに思い描くことが?切と?われていますが、頭の中だけで想像することは簡単なことではないと思います。私のコーチングではどうしても聴覚情報を主として?いがちです。
具体的な視覚情報も提案されると助かりますね。
 (6)楽しみながら!
お互いにワクワクしながら!!コーチングしたいものです。
このようなコーチングを助けてくれるツールとして以下のようなカードがあります。
 ・(??向け?の)コーチングカード、Points of You
https://www.points-of-you-asia.com/ja/about/
 イスラエルの頭の良い?々が練りに練って創り出したカードだそうです。
ただし、このカードをコーチとして使?するためには資格が必要です。
使ってみるとこのカードの写真などは海外の感性が?濃いように思いますので、
将来、?本?による?本?向けのカードが作られると嬉しいと思います。
 ・?供向けのコーチングカード、PIT IN CARD
https://www.reservestock.jp/stores/article/11379?article_id=12277
 コーチングは?育てにも使えると?われています。
コーチングとともに?的論であるアドラー?理学とコーチングを組み合わせたメソッドもあるようです。
当たり前のことですが、「?主性」「やる気」は?供にとっても?切なことです。
感情を表すカードは?分たちで作ってみるなど、カードを?作するとなお良いのかもしれません。
ファミリーコンピューター世代の私は、最近のゲームの世界がリアルで綺麗なことにとても驚いています。
そのうち、ヴァーチャルリアリティーを?いてコーチングをする世の中が来るのでしょうか。
そのような世が来たら、まずは澄みきった湖のほとりという虚像の中で、?のせせらぎのような?葉を使ってコーチをしてみたいと思っています。
さて、皆さまが?いたい理想のコーチングはどのようなイメージでしょうか?
 * * * * * * * * * * * * * *
発行 日本臨床コーチング研究会
住所 857-1195 長崎県佐世保市大和町15番地 佐世保中央病院内
Mail rinsho-coach@hakujyujikai.or.jp
発行人 松本一成
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年8月14日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
 今回は国保旭中央病院 糖尿病代謝内科 大西俊一郎先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
*大西先生はトライアスロンに取り組んでおられる「鉄人コーチング医師」です。大西先生ならではの楽しくて役に立つ配信記事です。
 +-+-
 *運動のススメ
 「コーチングを上手くできるようになりたい!」と思われている方、突然ですが、是非ともご自身で運動(スポーツ)を始めてみることをお勧めします。
 ・グローモデルについて
 コーチングで使用するツールの1つに、グローモデルがあります。グローモデルとは、英単語「Grow」つまりは
① Goal(目標[理想]の明確化)
② Reality(現状の把握)
③ Resource(資源の発見)
④ Options(選択肢の創造)
⑤ Will(目標達成の意志)のそれぞれの頭文字が由来となっています。
コーチングにおいて①~⑤を行なっていくというものです。
例えば、私のコーチングの典型例では下記のようにグローモデルを使います。
 (1)最初に本人の価値観を明確にしていきます。
 (2)その価値観に沿い(⑤)かつ緊急ではないが重要な事柄をテーマとして設定し、
  そのテーマについて他人ではなく自分が大いに影響し得る目標・目的を設定していきます。
そして、それらが達成された時の理想の状況について、5感をフルに活用して存分に想像してもらいます (①)。
理想の状況を考えるときには、人(あなたの憧れの〇〇さんだったらどうするだろう?)や時間(10年後にその状況を振り返ってみたらどう思うだろう?)、場(日本でなかったら?)など、視点を変えて自身を取り巻く枠組みを取り払うような質問を投げかけます。
 (3)それらの理想に比べて現状はどうなっているのか考えます。また、理想を100点とした時の現状を採点してもらうことで定量化していきます (②)。
 (4)現状の点数を現状より5点プラスするためにはまずは何をするか考えます(④)。その際に、自分を助けてくれる人や物についても考えます(③)
 (5)期限を含めた具体的な行動を決定します(⑤)
 (6)その後、その行動に対してフィードバックを行ない、再度(4)~(5)(場合によっては(1)~(3)も)を繰り返していきます。
・運動をススめる理由
 では、どうして運動がお勧めかと言いますと、
1) 運動はこのようなグローモデルの各要素が比較的わかり易いと思います。
  自分がその運動をしているかしていないか、できるかできないかは明確であることが多いですし、時間や距離など運動の現状を知るデータも取れることなど、上記のようなグローモデルの各要素である理想や現状、行動を明確にし易いと思います。例えば、私は最近トライアスロンにはまっています。競技での結果は時間で明確に表示されますし、心拍計・圧力計・速度計・血糖値など、様々な項目をモニタリング(フィードバック)して、(私の第一義の価値観である)楽しみながら、一つ一つ目標をクリアできるよう頑張っています。
2) (セルフ)コーチングを継続して行う良い機会になるでしょう。
 皆様は現在、ステークホルダー(コーチをする相手)を持ち定期的にコーチしてますでしょうか?
複雑な人間関係や忙しい日常の中で、なかなか難しいことかと思います。
私の周囲にはコーチングについて勉強はするけれども、実際に定期的にコーチ している人はとても少ない印象があります。
自身に対してであればコーチをするハードルは幾分下がるのではないでしょうか。
一方で、この場合は他人へのコーチよりも難しいと言われている自身 へのセルフコーチを行なっていくことになります。
ですが、運動では上記1)のように比較的わかりやすい要素が多いので取り組み易いとも思います。
良いコーチになるためにはコーチングをする機会を継続して重ねていく必要があります。自分を実験台にして取り組んでみてはいかがでしょうか。
3)(一般的なことですが)運動することで健康になり、自己効力感を高めることができるでしょう。
例えば、私は運動を定期的に取り組んでいる時は、仕事もはかどる上に間食も控える(運動が食欲を低下させるという報告もあります)ことができている印象があります。また、自分がまさかできるとは思ってもいなかった(自信もなかった)運動ができるようになり、災害などで電車が止まってしまった時でも最悪数10km程度であれば走って帰ればいいや、というような生物としての自信?のようなものがついてきました。やる気や自己効力感の変化を自身でも自覚できると、'相手のやる気を高めるお手伝い'とも言えるコーチをする上での自信に繋がるかと思います。
 「運動しようとは思うけど、自分には無理だろうし、時間がないなぁ」と思われている方、コーチングの威力を実感するチャンスです! 
コーチングも上手くなって、尚且つ健康にもなる、なんて運動し(2兎を追っ)てみませんか!?
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このページの更新日:2018/08/13

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年7月24日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、社会医療法人母恋 天使病院 森山由希子さんによるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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療養支援にコーチングを活かして
糖尿病を含む慢性期疾患は近年増加し高齢化も重なり、セルフケア指導支援の必要な患者は増えています。患者は長い間の生活習慣が変えられずに「わかっているけど変えられない」というところで悩み続け,将来に起こるかもしれない合併症の恐怖を持ちながら生活しています。
看護師は正しい知識や技術を指導することと病に向き合うとき直面する個々の感情や思いを知り、患者と共にその手段や方法を見つけ出してゆかなければならなく、専門性の高い支援が必要になります。
しかし、実際はどうでしょう?
臨床の場で次のようなことに悩み、困ったことはありませんか?
「わかっているのになかなか行動してくれない、変わってくれない」
「やる気をだしてくれない」
「指導しても興味をもってくれない」「本人のこだわりで治療が進まない」
こんな時、患者の指導、支援はどうしたらよいのでしょうか。
自分は伝えたつもりでも相手が変わるとは限らないのです。
以前の私は新たな知識を得ると「これは○○さんに教えなきゃ」「今度こそ、頑張れるはず・・」と一生懸命に指導しているつもりでいました。
しかし「がんばるね」「そうね・・・」と言ってくれた患者が、1か月、2か月、半年と時は流れても一向に変わらず、指導したことを実行してくれないということがありました。
どうしてでしょうか?上手くいかない理由は何なのでしょうか?
実はこの頃の私の指導は、知識・方法を伝えていただけの一方向の指導だったのです。一方向の指導では患者は行動を変えません。そして、変えれない理由や言い訳ばかりが多くなるのです。
そんな中で自分の療養支援の悪かった点に気がつき、新たに学ぶことができたのはコーチングとの出会いがあったからでした。
コーチングの基本的な考え方は「答えは相手がもっており、問題や課題を解決できる能力が相手には備わっている」というもので、その能力を引き出すことやそのプロセスがコーチングとなります。
『看護の覚え書き』のなかでナイチンゲールは看護とは「患者の消耗を最小限にし、自分の力で回復するように、環境を整えること、その人の治る力を助けること」と述べています。
すなわち、看護とは環境を整え、生命の潜在能力を引き出し高める技術と考えることができます。
この考え方がコーチングと類似していることからも、指導や支援にコーチングを用いることがごく自然のことのように感じます。
療養支援、指導の場面でコーチングスキルを意識的に活用するようになってから、私と患者のかかわり方は一方向から双方向に変化しました。また、患者自身が療養方法や目標を言葉にしたり選択することで、目標が実行でき、行動変容が起こったりすることを体験しています。

「聴く」「質問する」「承認する」のコーチングの基本スキルを使いこなせるようになると、相手が変わっていくことを体験し、自身のコミュニケーションスタイルにも変化を感じるようになります。私自身も相手の気持ちに近づき、寄り添いながら指導、支援が進められるようになり、楽しくさえ感じるようになりました。
コーチングスキルを獲得するには繰り返しの学びとモチベーションが必要と感じます。
みなさん、一緒にセミナーや学術集会に参加し学びを深めてみませんか。
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このページの更新日:2018/07/24

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年7月10日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、兵庫医科大学 医学教育センター ・岐阜大学 医学部 名誉教授 高橋 
優三 
先生による3話連載によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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コーチングなしでコーチングする(3話の3)
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  「コーチングなしでコーチングする」を考えますと、どうしても思い当たるのは、
  日本の伝統的な礼儀作法です。
礼儀作法は、「あなたの事を尊重しています。認識しています。敬意を表します」などを
肯定のメッセージとして非言語的に伝えます。
コーチングスキルを裏打ちするのは、相手を肯定している心です。この見えない土台が地中にあって、
その上にゼロポジションだとかペーシングが基礎となり、さらに種々のコーチングスキルが建物として
目に見えるわけです。
  例えば、相手を肯定する心に着目しますと、日本の伝統的な礼儀作法の中に、これが散見されるのです。
  例えば、誰かの前を横切る時、一礼してから横切る。
部屋の出入りごとに一礼する。控えめに話し、自分中心にしない謙遜。
これらは、すべて相手を認識し肯定する心から派生したものではないでしょうか。
私達日本人は、昔から、コーチングの根本原理を理解し、これをコーチングスキルとするのではなく、
礼儀作法に植え込んでしまった、と考えたくなります。
  日々のこの相手を肯定する積み重ねが、相手との信頼関係を盤石とし、いざという時の発言が、
少々まずくても誤解されにくいし、かつ相手を動かす力になるのではないかと考えられます
私どもが目を凝らせば、今までコーチングとは無縁と思われていたことにも
コーチングスキルと同様の効果を発揮するように思えます.
皆さんの鋭い目で、隠れたコーチングを再発見しませんか?
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このページの更新日:2018/07/10

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年6月26日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、兵庫医科大学 医学教育センター ・岐阜大学 医学部 名誉教授 高橋 
優三 
先生による3話連載によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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コーチングなしでコーチングする(3話の2)
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逸話を、もう一つ続けます。私の家の近所に南都雄二と都蝶々の有名な漫才師夫婦が住んで居ました。この二人は離婚したのですが、夫に尽くしているはずの蝶々さんは、何故、自分が嫌われたのか、分らない。それで聞いてみると「お前は私に一生懸命尽くしてくれる。それが、私には負担に感じるのや」
コーチングもやり過ぎますと、逆効果になるのでは? 特にコーチングが普及してコーチングに詳しい人が周囲に大勢いる段階になりますと、習ったばかりのぎこちないコーチングを駆使するのは、もはや、嫌味に取られるか・・・、バカにされるか・・・・
私は、糖尿病の患者で血糖のコントロールが良くなった場合、勿論、褒めるのですが、ある日ある患者は、良くなった数値を聞いた瞬間、「先生、褒めんといてください。私、頑張りますので」と手の掌を左右に振りながら言いました。
おそらく、あからさまに褒められるのが心の負担だったのでしょう。
私達は、コーチングの有用性を熟知しており、コーチングスキルの習得を目指しています。ぜひ、このまま続けましょう。しかし、ある段階に達した人は、「コーチングなしでコーチングする」を考えるのは、如何でしょうか。 一生懸命なのがミエミエの声掛けは相手に心の負担をかけ、ぎこちない声掛けは相手を白けさせ、うますぎる声掛けは鼻持ちならん感情を起させる、そのような心配もあります。
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年6月12日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、兵庫医科大学 医学教育センター・岐阜大学 医学部 名誉教授 高橋 優三 
先生による3話連載によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。

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コーチングなしでコーチングする(3話の1)
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「コーチングなしでコーチングする」は、もちろん、コーチングをしないでコーチングと称すると言うインチキではなく、私達が習得を目指しているコーチングの声掛けを使わず、コーチングしたのと同じ効果をもたらす、の意味です。

私がこれに興味を抱いたきっかけは、文楽の巨匠の言葉です。
皆様ご存知のように、文楽の人形は、3人が協同して一つの人形を動かします。
体の動きで、状況や感情を表現するのは、歌舞伎の役者と同じく、とても芸術性の高い技能です。歌舞伎役者の場合は、医学的に言うなら自分の錐体外路系の運動調整能力だけで完結します。
しかし3人の動きを協調させるには、3つの錐体外路系を統合させねばならず、これには異次元的なコミュニケーションが必要です。文楽では、これを克服し日々、人形の動きでの表現力を磨いています。
ところが、人間国宝になった巨匠は、人形の動きなしで動きを表現する、を目指したらしいです。
私は、最初、何を言っているのか、訝しかったです。ところが良く考えると、同じような原理が、薄味の日本料理や淡い水墨画にも、有る。
さらに、ひょっとして、コーチングにも・・・。
こうしてコーチングで習った声掛け使わずに、コーチングできるのかに興味を持った次第です。
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年5月22日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、佐世保中央病院 松本 一成 
先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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医療界におけるコーチングの立ち位置は?
10年前と比較すると、医療業界においてコーチングは広く認知されるようになってきたと思います。
一方で、その実用性については否定的な意見もあるように思います。曰く、「コーチングは役に立たない」・「具体的にどう使えばよいのかわからない」・「時間がかかりすぎて医療現場には合わない」などです。
元来、医療はティーチングが主体となる領域です。先輩が後輩に、知識と経験を徹底的に教え込む。あるいは患者さんに医学的知識を丁寧に教え込む。このように上級者から初心者へのティーチングこそが医療界で引き継がれてきた伝統なのです。そして、この傾向はとくに高度な専門的技術を必要とする外科系で顕著であろうと思われます。
コーチングを学習するとき私たちが陥りがちな失敗は「コーチングの方がティーチングよりも優れている」という考え方をしてしまうことです。ところが、医療現場ではティーチング無しでは仕事はできません。
ましてや、新人の成長もありえません。やっぱりティーチングは必要なのです。しかしながら、ここで問題になることは、「教えすぎ」の弊害です。先輩が後輩に教えすぎると、後輩は自ら考えなくなります。先輩の言うとおりにやればよいのですから。つまり主体性の欠如です。「主体性」をもった人材を育成するためには、コーチングが有用です。ティーチングのあとに、「あなたはどう思いましたか?」あるいは「これから何をしようと思いますか?」といったコーチング的な質問を付加するだけで知識のみならず主体性をも成長させることができるようになるのです。
ティーチングとコーチングを上手にミックスすることが最も医療現場に即した方法なのではないでしょうか。
佐世保中央病院 松本一成
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年5月8日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

今回は、佐世保中央病院 松本 一成 
先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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  「未完了」がふえると・・・
  3月中旬のことです。糖尿病センターのスタッフから、「最近松本先生はつっけんどんでイライラしていますよね。どうされたのですか?」と聞かれました。
  「えっ、そうかな?」と聞き返したところ、そのスタッフは「みんなそう言っていますよ。なんだか声をかけづらいねって。」と答えました。
  うーん。実はそうだったかもしれません。
  年度末が近い時期には、処理すべき仕事や書類は山積みでした。
  そして、優先順位も決めないままに仕事量は増えてカオス状態・・つまり、未完了によって押しつぶされそうな状態でした。
  その結果、不機嫌な表情で、余裕のない立ち居振る舞い、果ては八つ当たり。
  スタッフに声をかけられるまで自分がそのような状態であることに気が付くことができませんでした。
それからは、自分の仕事を見直して優先順位を決め、計画的に処理することにしました。
  必ずしも計画通りには進みませんでしたが、未完了が減っていくたびに身も心も軽くなっていきました。
  ところで、医療現場の働き方改革はこれからどうなるのでしょうかねえ。
  佐世保中央病院 松本一成
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このページの更新日:2018/05/08

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年4月24日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。

今回は、佐世保中央病院 松本 一成 
先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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「〇〇できない」について
「・・ができない」という発言をしばしば耳にします。
この「できない」には、ひとつには対処する能力が不十分であるためにできない場合があります。
例)「インスリン自己注射ができませんでした。」
わかっているつもりであったが、本当に理解しているわけではなかったが真相です。
これに対処するには、練習して自己注射を実行する能力を身につけることが必要ですね。
また、問題を軽く見積もりすぎてしまい実際にはできなかったという場合もあります。
例)「スポーツジムに入会して運動療法をしようと思ったのですが、入会しただけでほとんど行っていません。仕事が終わったら行こうと思っていたのですが、疲れているうえにお腹もすいていて無理みたいです。」
自分が思っていたよりもハードルは高かったということですね。計画を見直す必要がありそうです。
もうひとつは、「できない」の表現を借りた「したくない」があります。
例)「甘い菓子の間食をやめられません。」
これは、菓子を食べることをやめる能力が欠如しているのではありません。本当は「菓子を食べることをやめたくない」と言っているのです。これは、糖尿病の悪化を避けるために間食をやめることを拒否している表現です。すなわち、この患者さんにとっては現時点では甘い菓子を食べることの方が、糖尿病の重症化防止よりも価値観が高いということです。これから、そのことについてもっと深く対話する必要がありそうです。
以上のように、「〇〇できない」という発言を聞いたら、上記のような背景を考慮しながら患者さんとともに解決策を検討してみてください。
佐世保中央病院 松本一成
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年4月10日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、佐世保中央病院 松本 一成 
先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。

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コーチングにおいて、大変重要な要素として「承認」があります。
承認とは相手の存在を認める、受けとめる、肯定するということです。
この承認がなければ、医療者と患者さんとの「治療同盟」は結成することができないと思われます。
それでは、医療者が患者さんを承認しているということが、どうすれば相手(患者さん)に伝わるのでしょうか?
その最も有効な方法は「患者さんの話を傾聴すること」です。
傾聴は相手に対する最大級の承認です。反対に、患者さんの話を聞かないことは「相手の存在を認めない」と否定したことになります。
話を聞いてもらえなければ、「私は大切に扱われていない」とか、「私はダメな人間なのかもしれない」といった自己効力感の大幅な低下をもたらすかもしれません。
佐世保中央病院の糖尿病センターでは、コーチングを意識した専門外来を行っています(栄養看護外来)。管理栄養士または看護師が糖尿病患者さんの話を傾聴しながら自己管理能力の成長を支援する外来です。
190例の患者さんに、「糖尿病センターのスタッフは、あなたの話をきちんときいてくれますか?」というアンケート調査を行ったことがあります。
答えは
a)よく聴いてもらえる
b)まあ、聴いてもらえる
c)あまり聞いてもらえない
d)ほとんど聞いてもらえない
の4つから選んでもらいました。
結果はaが90.2%、bが9.3%、cが0.5%、dが0%でした。
患者さんの話を傾聴する。ただこれだけのことで患者さんは自己効力感がアップします。
医療者の承認が伝わります。そしで、関係性が改善し「治療同盟」を結成できるようになります。
医療者は自分の話を少し抑えて、まずは患者さんの話を聴くことを意識してみましょう。
佐世保中央病院 松本一成
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このページの更新日:2018/04/10

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年3月27日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、佐世保中央病院 松本 一成 
先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報 2018年3月
コーチングが最も有効なのはどのような患者さんなのか?
佐世保中央病院の糖尿病センターにおいて、患者さんとのコミュニケーションをコーチング中心にしてからすでに10年以上になります。
コーチングが有効であった患者さんはかなりの人数いたように思います。一方で、あまり有効ではなかったことも時にはありました。
では、コーチングが最も奏功した患者さんはどのような患者さんであったのかを思い出してみます。
コーチングは、能力が高い人が、困難な課題に挑むときに最もその有効性を発揮するといわれています。
1型糖尿病歴10年の会社員Aさん。
1日4回のインスリン治療をこなし、HbA1cは7~7.5%でまずまずのコントロールです。
彼が、会社の上司の命令ではじめての海外出張に行くことになりました。当院を受診した際に、どうすればいいのかを相談されました。
ここで私が行ったことは、「何が心配?」、「どんな時に困ると思う?」という質問です。
時差のこと、機内食のこと、低血糖のこと、インスリンや血糖測定器の機内持ち込みのこと、いろいろと問題を出すことができました。また、旅程をきちんとしらべて、タイムスケジュールを明確にすることで、基礎インスリン補充の時間を決める必要があることもわかりました。これらに対する答えは患者さん自身が考えます。
一方、主治医である私は、英語・中国語・フランス語で書かれた「私は糖尿病ですカード」に患者さんの治療情報を記載して渡すことを約束してその日の外来を終えました。
どの国に行って、どのような仕事をするのか?主治医である私の知識のみを頼りにティーチングするよりは、患者さん自身で情報を集めて対策を考えるコーチングの方が有効であったと思われる事例です。
自己管理能力が高い患者さんにはコーチングの比率高めでの診療がよさそうです。
佐世保中央病院 松本一成
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年3月13日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、日本IBM株式会社 
専属産業医 佐藤文彦先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報   2018年3月
 昨年11月に、都内で病院やクリニックで糖尿病療養指導を行っている療養士さん向けのリスニング・カンバセーションと言うロールプレイを行うセミナーがありました。
山王病院の岸本美也子先生や国立がん研究センター中央病院の大橋健先生、大森赤十字病院の北里博仁先生などが10年近く続けられているセミナーです。
この日は特別企画として、会社や保険組合等で普段、特定保健指導を行っている保健師さん達も参加しました。
もちろん、糖尿病の指導と言えば、糖尿病療養指導士さん方の専売特許の様なものですが、思った以上に、医師を含め医療機関の医療者側から、保健師さん達の日頃の奮闘ぶりに大きな反響がありました。
それは、保健指導を開始する時の保健師さん達の挨拶・冒頭の言葉に表れていました。
例えば、
保健師① こんにちは.保健師の○○です.よろしくお願いします.済みません.お名前をお伺いしておいてよろしいですか.
社員 △△といいます.
保健師① 本日はお越しいただきまして,有り難うございます.先生からこちらに来てくれというお話しがあったんですね.何か今,自覚症状などはありますか.(中略)
保健師① 好きな食べ物とかはありますか.
社員 揚げ物とかが大好きです.
保健師① 揚げ物が好きなんですね.
社員 ハンバーグとか肉とかも大好きです.
保健師① おいしいですね.そのときにお野菜とかも一緒に食べられたりしますか.
社員 ちょっとつけ合わせについているキャベツとかはなるべく食べるようにはしてますけど.
保健師① すばらしいです.やはりそういった揚げ物とか肉とかを食べるときは,野菜とセットで食べていただくといいかなと思います...。
(以下略)
~このロールプレイ終了,フィードバック時~
ファシリテーター 社員さん役の方は、実際に社員役をやってみてどうでしたか.
社員 初めてお話しした中で,すごくしっかりうなずいてくださって,本当に承認してもらっているというのが感じられて,話しやすかったです.
なかなかできていないことに関しても,意欲を認めてくださって,スポーツクラブに入ろうと思ったということは偉かったですねとか言ってくださったところも,自分ではできていない,すごく悪いなと思っていたところだったので,うれしかったです.
オブザーバー すごくお話を傾聴されていましたし,丁寧に聞かれていたので良かったです.励ましの言葉とかもすごくよかったなと思いました.
(以下略)
その他にも、
保健師② こんにちは.保健師の△△と申します.
社員 □□です.よろしくお願いします.
保健師② きょうはお忙しいところ来ていただいたんですけれども,何か気になることがありましたか.
社員 そうなんです.まあ血圧とか血糖とか中性脂肪とかが高くって,病院に行ったりもしているんですけど,自分も本当はもっと痩せたいなと思っているんです.
(以下略)
保健師③ 今日はお忙しいところいらしていただいてありがとうございます.保健師の■■と申します.よろしくお願いいたします.
社員 初めまして,□□です.よろしくお願いします.
保健師③ 今日はお時間、どのくらい大丈夫でいらっしゃいますか.
社員 ちょっと忙しくて,できれば20分か30分ぐらいまでで,済みません.
保健師③ かしこまりました.じゃあ,今から20分後までに終わるようにいたしますね.
社員 お願いします.
保健師③ 今回は,どういうことでこちらに来てくださいって言われましたか.
(以下略)

お読みになってお気づきの通り、会話の冒頭に承認が多く含まれた挨拶をされているのが非常に印象的ではないでしょうか。
普段、病院・クリニックで働いていると、医療者がなかなか言えていない挨拶・会話内容であるかもしれません。多くの保健師さん達は、「自分の身体に関心をもっていただいてありがとうございます」「(嫌々来たかもしれないけれど)でも、とりあえず来ていただいてうれしいいです」という気持ちで接しておられることがわかります。
この日、これらのロールプレイの後に、コーチングのミニレクチャーを、私から話させていただきました。
実は、上記の保健師さんはいずれも、コーチングのレクチャーを聞くのは初めてだったとのこと。
ということは、保健師さん達は、今までの数多くの保健指導の経験(修羅場?)の中で独自に辿り着いた、挨拶や承認の言葉であったと言えます。
保健師の皆さんは、コーチングのミニレクチャーを受けて、こんなに理論的にコミュニケーション方法を学んだことはなかったので、非常に勉強になりましたと話されていました。
もちろん会社にもよりますが、一般的に、社員の4分の1程度がメタボリックシンドローム該当者、特に社員の6~7割は脂質代謝異常該当者等とも言われています。このため、保健師さん達は1年中保健指導を行っていないと、毎年該当社員全員との面談が終了しない状況になっています。
しかし現実には、痛くも痒くもない生活習慣病の指導を受けることに対して、拒否的な態度をとる社員も少なくありません。その様な雰囲気の良くない社員との面談の中でも、何とか社員の皆さんに生活習慣の見直しをしてもらおうと、日々頑張っておられます。
しかし一方で、産業保健スタッフの中では、医療機関に受診されている社員はかなり優等生と言われています。現実には、毎年健康診断で医療機関への受診を促されていても、全く放置されている社員の多いこと多いこと...。
そんな保健指導(修羅場)を潜り抜けてくると、あの様な承認の言葉を発することの大切さを、経験的にはっきり自覚されるのではないかと思います。
ある意味、「まず最初に承認する」ということは、良好なコミュニケーションを開始していく上で、我々が思っている以上に重要なのかもしれません。
そういう経験を積んだ医療者が、ひとたびコーチングを学び始めると、飛躍的に上達していくのではないのでしょうか。そして、私自身もしっかり見習わなくてはと改めて思います。
(今回のロールプレイの会話文の使用につきましては、山王病院の岸本美也子先生から快くご許可をいただきました。)
日本IBM株式会社 専属産業医 佐藤文彦
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発行 日本臨床コーチング研究会
住所 857-1195 長崎県佐世保市大和町15番地 佐世保中央病院内
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発行人 松本一成
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このページの更新日:2018/03/13

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年2月27日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、済生会 西条病院 金子由梨先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。

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コーチングを日頃意識する中で出会った書籍をご紹介したいと思います。
先日、日本コーチ協会の年次大会でヤフーの取締役副社長、川邊氏の「エグゼクティブ・コーチングの効果について」という講演を聴講しました。
ヤフーが「人材を育成する会社となる」ことに向けた、組織を上げてのイノベーティブな取組みがとても興味深く、終了後も活発な討議が行われていました。
ヤフーの取り組みの一つである「1on1ミーティング」について書籍化したとの紹介があり、参考になりましたので、皆様にもご紹介したいと思います。
ヤフーの1on1? 部下を成長させるコミュニケーションの技法
本間 浩輔
https://goo.gl/ewknzq
※Amazon のページが開きます
今日は何を話そうか、で始めるヤフーの1on1
ヤフーでは2012年から「1on1ミーティング」といって毎週1回30分定期的に部下と上司がコミュニケーションを取る機会を充てることを制度化しました。
この1on1は社員が経験を振り返って学びに換え、その学びを試し、実際に試して学びが行かせたかをチェックする、そのPDCAのプロセスをまわす手段として活用されています。
1on1は部下のために行う。
「もう少し詳しく話をしてください」
上司が詳しい状況を把握するためではなく、部下が内省し、客観的に自分を見ることで、今まで動いていなかった部分を動かすために質問をする
質問に答えられないときは 脳みそに汗をかいて考えている時
こういうときは答え=言語化を急かさず沈黙を大切にする
人財開発企業へ
ヤフーは人財開発企業になるというスローガンを抱えて1on1を開始しました。
働く人がヤフーの社員になることに寄って能力を開発され成長していくような会社になりたい、自分の気づかなかったような才能に気づき、成長できる、そのような会社にしたい。
ヤフーは社員の経験を大切にしつつ社員の才能と情熱を解き放つ事によって人財開発企業になることを目指しています。
コーチングを学んではみたものの、実際の現場ではそれだけでは成り立たないと感じる方も多いのではないでしょうか。
この1on1ミーティングではコーチングだけでなくフィードバックやティーチングを入れながらコミュニケーションを続けてきます。部下の話を聞くことで自ら考え行動し、その行動経験から学んでいくことを重視する一方で上司として必要なティーチングやフィードバックを適切に行うという形態を取っています。
ビジネスコーチングではコーチは評価しない、アドバイスしないことになっていますが、実際の現場では適切な評価やフィードバック、アドバイスが必要であることは間違いなさそうです。
1on1はコーチングを学んだ上で、それを実際に現場に活かしていく優れた手法だと感じました。
実際の導入に当たって幹部がどのようなことを考えていたのか、現場で上司として1on1を導入した人、部下として1on1を行った人など様々な立場の人へのインタビューもあり、人材育成にコーチングを活用する際に参考になる1冊です。
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さて、如何でございましたでしょうか?臨床コーチングに役立つ情報を会員で共有してもいいよというあなた。是非、情報を事務局までお知らせくださいませ。
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このページの更新日:2018/02/27

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年2月13日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
今回は、済生会西条病院の金子由梨先生によるチームコーチングに関する内容を配信させていただきます。
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コーチングを日頃意識する中で出会った書籍をご紹介したいと思います。
「小さな習慣」スティーヴン・ガイズ
https://www.amazon.co.jp/小さな習慣-スティーヴン・ガイズ-ebook/dp/B072B8S2YN
小さな習慣とはあなたが新たな習慣にしたいと思っている行動をもっともっと小さい形にしたもので、こんなに簡単でいいの?と思うくらいの課題を自分に与え、それをほんのわずかな意志の力を使って実行するというもの
作者は目標を立てる度に三日坊主になることを悩んでいました。あるとき、"腕立て伏せを1回だけする"ことにしたところ、1回、2回と続けることができ、やっているうちにもっとやりたいという気持ちが芽生え、最終的に30分運動をすることが出来ました。その後もこの"小さな習慣"を継続することに成功、次々と目標を達成し、夢を叶え、人生までも変えることができました。
私たちが行動をする時に1番のハードルとなることが「始めること」です。
そこで目標を小さく小さくすることで、始めるのにかかるエネルギーを最小にする事ができます。あまりに小さい目標なので、モチベーションに頼る必要もありません。毎日、「自分は今日も習慣を実行出来た」という事実が自信になり自己肯定感が高まり、継続をより強固なものにしていきます。
行動変容のための目標設定の際、スモールステップを意識していましたが、これをもっともっと小さくすることで成功率をあげることができる、と教えてくれた本です。
そして、実際に試してみて嬉しい成果が得られたのでご報告します。
活用例1
肥満の2型糖尿病の70歳代の女性。
息子が運動のために室内用の自転車を購入してくれたが続かなかった。
外来で血糖値が悪化しているのを聞けば、運動しなくちゃと思うが、数日経つと忘れてしまう、やらないことに気後れしてさらにやれなくなってしまっていました。
目標:毎日2回20分間自転車を漕ぐこと
小さな習慣:自転車のところまで歩いて行って、自転車を触る
結果:1ヶ月後の外来で自転車触りましたか?と伺うと、先生、毎日自転車乗りましたよ!とうれしい回答があり、なんとゴールとなる行動をすでに実行してくれていました。
とりあえず触ればOKという気軽さで行動を開始、せっかく自転車の側まで来たんだし、乗ってみようかなという気持ちになり続けられたとのこと。体重も減り、HbA1cも改善、そして、数ヶ月後経った現在も目標としていた行動は継続できています。
活用例2
コーチングセミナー参加者の60代男性
目標:運動習慣を身につけたい
小さな習慣:腹筋1回
本を購入、中で紹介されていた行動を記録するアプリを実際に活用し、毎日の行動を見える化することで、2ヶ月腹筋が継続できているとのことでした。
自分自身に何か日常に取り入れたい習慣がある方はぜひご一読ください。
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さて、如何でございましたでしょうか?臨床コーチングに役立つ情報を会員で共有してもいいよというあなた。是非、情報を事務局までお知らせくださいませ。
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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年1月23日

会員のみなさんこんにちは。
会員の皆様の臨床コーチングに役に立つ(かもしれない?)情報を発信いたします。
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「説明すること」と「対話」の違いについて
 
とても印象的な記事でしたので、日経メディカルのwebより転載しています。
 
「ある病気で何週間か入院している患者さん(学校の先生でした)の病状を知りたいと、その職場の校長先生がやってきたことがありました。
説明の際、担当しているレジデントはその校長先生に鑑別診断から行った検査の内容、診断を確定する上で検討している次のステップなどありとあらゆることを説明したのですが、校長先生の顔はどんどん困り果てた顔になっていきました。
これはさすがにつらいかもしれないと助け舟を出し、「休職期間が読めないので、教育委員会には代理の先生に来ていただけるよう申請した方が無難かと思います。
証明書は当方で書きます」とお話ししたところ、「そうですか。助かります!」と嬉しそうに帰っていきました。
 
 医師は、患者や患者関係者に対して説明を行う際に、まずその人が「何を知りたいのか?」について推察すること、さらには、「特に知りたいことはどのようなことでしょうか?」と直接相手に聞いてみること。このプロセスがあるだけで、「聞いてない」のズレは大幅に改善します。
 
医学的な内容を詳細に説明しても、それは「相手が求めるもの」ではないのかもしれません。
このようなときに、患者や家族は詳細な説明を受けたにもかかわらず「聞いていない」と証言します。
インフォームドコンセントは説明に重点が置かれているために、「対話」を怠りがちになります。
心してかからなければなりませんね。
 
佐世保中央病院 松本一成
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このページの更新日:2018/01/23

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日本臨床コーチング研究会メール通信 2018年1月9日

会員のみなさんこんにちは。
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言葉の選択について
2012年よりアメリカ糖尿病協会(ADA)は、"Patient-centered 
approach"をスローガンに掲げています。
これが、年々具体的になってきており、2017年には「使用する言葉の選択」についても言及しています。
糖尿病患者が「スティグマ(Stigma※)」を感じるような言葉を使用しないように気を付けようという提唱です。
※Stigma:ギリシャ語で、奴隷や犯罪者の身体に刻印された徴しるしの意〕個人に非常な不名誉や屈辱を引き起こすもの。恥辱。汚名。負の印。名折れ。烙印(らくいん)。(大辞林)Stigma:ギリシャ語で、奴隷や犯罪者の身体に刻印された徴しるしの意〕個人に非常な不名誉や屈辱を引き起こすもの。恥辱。汚名。負の印。名折れ。烙印(らくいん)。(大辞林)
American Association of Diabetes Educators 
(AADE)によれば、糖尿病は医療者が"control"するのではなく、患者が"manage"すると表現することを勧めています。あるいは、非糖尿病者を"normal"と呼ぶのではなく、" 
person without 
diabetes"を勧めています。非糖尿病がnormalであれば、糖尿病はabnormalになってしまうから。他にもたくさんの事例が掲載されていますのでご参照いただければ幸いです。
(The use of language in diabetes care and education. Dickinson JK, et al. 
Diabetes Care 2017 online October 17, 2017)。
医療業界でのコーチングの際には、言葉の選び方は重要なポイントになりそうです。
患者やスタッフが前向きな気持ちになれるように「スティグマ」的な言葉遣いを可能な限り減らしていきたいものですね。
佐世保中央病院 松本一成
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発行 日本臨床コーチング研究会
住所 857-1195 長崎県佐世保市大和町15番地 佐世保中央病院内
Mail rinsho-coach@hakujyujikai.or.jp
発行人 松本一成

このページの更新日:2018/01/09

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